2026年7月24日

花粉症や風邪、アレルギー性鼻炎などで鼻詰まりを経験したことがある方は多いのではないでしょうか。
鼻詰まりは「少し息苦しい」「寝づらい」といった不快な症状として捉えられがちですが、実はお口の健康にも深く関わっていることをご存じですか?
鼻詰まりが続くと、人は無意識のうちに口で呼吸をするようになります。この「口呼吸」が続くことで、お口の中が乾燥し、虫歯や歯周病、口臭など、さまざまなトラブルを引き起こしやすくなるのです。
「鼻が詰まっているだけだから大丈夫」と思っている方も少なくありません。しかし、毎日の何気ない口呼吸が、お口の健康を少しずつ損なっている可能性があります。
今回は、鼻詰まりがお口の健康に与える影響と、その対策についてわかりやすくご紹介します。
なぜ鼻詰まりで「口呼吸」になってしまうの?
鼻詰まりが続くと、十分な空気を取り込もうとして、私たちは無意識のうちに口で呼吸をするようになります。
一時的な口呼吸であれば大きな問題になることは少ないですが、花粉症や慢性鼻炎などで何日も続くと、お口の環境は少しずつ変化していきます。
その中でも最も大きな変化が、「お口の乾燥」です。
本来、お口は呼吸をするための器官ではなく、食べ物を取り込み、消化へつなげる入り口です。そのため、口を開けたまま呼吸を続けることは、お口にとって決して自然な状態ではありません。
乾燥したお口では、健康を守るために欠かせない「唾液」が十分に働けなくなってしまいます。
お口が乾くと、唾液の力が十分に発揮できなくなる
「唾液はただお口を潤しているだけ」と思われがちですが、実はお口の健康を守るための重要な役割を担っています。
例えば、唾液には次のような働きがあります。
⚫︎ 食べかすや細菌を洗い流す「自浄作用」
⚫︎ お口の中の酸を中和する「緩衝作用」
⚫︎ 歯の表面を修復する「再石灰化作用」
⚫︎ 細菌の繁殖を抑える「抗菌作用」
唾液は1日に約1〜1.5リットル分泌されるといわれています。しかし口呼吸が続くと、唾液は次々と蒸発し、本来の働きを十分に発揮できなくなります。
その結果、お口の中では次第に細菌が増えやすい環境ができあがってしまうのです。
お口の細菌が増えると、どんなことが起こる?
健康なお口の中では、唾液の働きによって細菌の数やバランスが保たれています。
しかし、お口が乾燥するとそのバランスが崩れ、虫歯菌や歯周病菌が活発に増殖しやすくなります。
つまり、鼻詰まりによる口呼吸は、お口が本来持っている「細菌から身を守る力」を弱めてしまうということです。
では実際に、どのような症状が現れやすくなるのでしょうか。
口呼吸が続くと起こりやすいお口のトラブル
①虫歯・歯周病になりやすくなる
口腔内が乾燥すると、虫歯のリスクは健常時の約3倍まで高まるという報告があります。
また、歯周病菌も増殖しやすくなるため、歯茎の腫れや出血などの症状が現れやすくなります。
②口臭が強くなる
唾液が減少すると細菌が増え、揮発性硫黄化合物という臭いの原因物質が多く作られるようになります。
「朝起きたときだけ口臭が気になる」という方は、口呼吸が関係しているかもしれません。
③歯並びや噛み合わせにも影響する
慢性的な口呼吸では舌の位置が下がり、歯やあごにかかる力のバランスが変化します。
その結果、出っ歯や開咬(前歯が噛み合わない状態)など、歯並びや噛み合わせに影響を与えることがあります。
④全身への影響
口呼吸が続くと、お口のトラブルだけではなく、次のような症状につながることもあります。
⚫︎ 朝起きた時の喉の痛みやイガイガ感
⚫︎ 風邪を引きやすくなる
⚫︎ いびきや睡眠の質の低下
⚫︎ 味覚が鈍くなる
「なんとなく体調が優れない」という方は、口呼吸が影響している可能性も考えられます。
鼻詰まりがあっても、お口の健康を守るためにできること
鼻詰まりをすぐに改善することが難しい場合でも、お口の環境を守ることはできます。
まずは、次のようなセルフケアを取り入れてみましょう。
✔️ こまめに水分補給をする
✔️ 加湿器で室内の湿度を50〜60%に保つ
✔️ 鼻洗浄で鼻の通りを整える
✔️ 就寝時は医療用テープで口を閉じる
✔️ 「あいうべ体操」で口周りの筋肉を鍛える
「あいうべ体操」は、「あー・いー・うー・べー」と大きく口を動かす体操です。1日30回ほど続けることで、舌の位置や口周りの筋肉が整い、自然な鼻呼吸につながることが期待されています。
そして、セルフケアだけに頼らず、歯科医院で定期的なクリーニングやお口のチェックを受けることも大切です。乾燥による変化や虫歯・歯周病の兆候を早めに発見し、お口の健康を維持しやすくなります。
まとめ
鼻詰まりは「鼻だけの症状」と思われがちですが、口呼吸を引き起こすことで、お口の環境を大きく変化させ、虫歯や歯周病、口臭、歯並びなど、さまざまな問題につながる可能性があります。
「朝起きると口が乾いている」「寝ているときに口が開いていると言われる」「口臭が気になる」といった症状がある方は、口呼吸になっているサインかもしれません。
日頃のセルフケアに加え、歯科医院での定期検診を活用しながら、お口の健康を守っていきましょう。
監修:永井歯科医院 院長 永井 太一