2026年6月12日

「いつまでも自分の歯でおいしく食事を楽しみたい」
---誰もがそう願うのではないでしょうか。
それでは、80歳になった時、あなたの歯は何本残っているでしょうか。
実は、人生100年時代といわれる今、「歯を何本残せるか」は健康寿命を左右する重要なテーマになっています。
実際に、自分の歯でしっかり噛めることは、食事の楽しみだけでなく、健康寿命や生活の質(QOL)にも大きく関わっています。近年では、お口の健康が全身の健康や認知機能の維持にも関係していることが分かってきました。
8020運動とは?
「8020(ハチマルニイマル)運動」とは、「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という目標を掲げた国民運動です。
1989年に厚生労働省と日本歯科医師会が提唱し、自治体や医療機関、企業などが連携しながら、長年にわたって国民へ啓発活動を続けてきました。
人の永久歯は親知らずを除くと28本あります。20本以上の歯が残っていれば、多くの食べ物を不自由なく噛むことができるとされており、健康寿命の延伸や生活の質(QOL)の向上にも大きく関わっています。
近年では、歯の健康と全身の健康との関連も明らかになってきており、8020運動は単なる歯の本数の目標ではなく、生涯にわたる健康づくりの重要な指標として定着しています。
8020運動の達成率は大きく向上
8020運動が始まった当初、80歳で20本以上の歯を保っている人はごくわずかでした。
しかし、歯科医療の進歩や予防意識の向上、フッ化物の活用、定期的なメインテナンスの普及などにより、その達成率は年々向上しています。
令和6年の調査では、80歳で20本以上の歯を有する人の割合は61.5%となりました。これは、およそ3人に2人弱が8020を達成している計算になります。
かつては「難しい目標」と考えられていた8020ですが、現在では多くの方が達成できる時代になりつつあります。
次のステージとして注目される「KEEP28」とは?
8020運動の成果が広く浸透した現在、歯科界では次の目標として「KEEP28(キープニイハチ)」という考え方が注目されています。
KEEP28とは、永久歯28本をできる限り失わずに維持することを目指す取り組みです。
しかし、KEEP28が重視しているのは単に歯の本数だけではありません。
大切なのは、
●しっかり噛める
●痛みや違和感がない
●歯周病が進行していない
●虫歯が繰り返し発生していない
●口腔機能が維持されている
といった、「歯が機能している状態」を保つことです。
例えば、28本の歯が残っていても、重度の歯周病でグラグラしていたり、噛み合わせに問題があったりすると、本来の役割を十分に果たすことはできません。
KEEP28は、「残っている歯を健康な状態で使い続ける」ことに重点を置いた新しい考え方なのです。
歯を失う原因は虫歯だけではない
成人が歯を失う主な原因として挙げられるのが歯周病です。
歯周病は初期段階では自覚症状が少なく、気付かないうちに進行してしまいます。歯を支える骨が溶け、最終的には歯が抜けてしまうこともあります。
また、虫歯の再発や歯の破折(ひび割れや欠け)、噛み合わせの問題なども歯を失う原因になります。
そのため、毎日の歯磨きだけでは防ぎきれないリスクを早期に発見し、適切なケアを行うことが重要です。
「治療する歯科」から「歯を守る歯科」へ
これまでの歯科医療は、「痛くなったら治療する」という考え方が主流でした。
しかし現在は、「悪くなる前に予防する」という考え方へ大きく変化しています。
虫歯や歯周病は、一度進行すると元の健康な歯の状態には戻りません。治療によって機能を回復することはできますが、天然の歯に勝るものはないのです。
そのため、歯を削る前に予防する、歯を抜く前に守るという予防歯科の重要性がますます高まっています。
8020からKEEP28へと目標が進化している背景には、「歯を失わないこと」だけでなく、「健康な歯を長く使い続けること」を目指す時代になったことがあります。
KEEP28を実現するために大切な定期検診
KEEP28を目指すうえで欠かせないのが定期検診です。
定期検診では、
●虫歯の早期発見
●歯周病のチェック
●歯石除去やクリーニング
●噛み合わせの確認
●ブラッシング指導
などを行い、お口の健康状態を継続的に管理します。
自覚症状がなくても、虫歯や歯周病が進行していることは少なくありません。
定期的に歯科医院でチェックを受けることで、問題を早期に発見し、最小限の治療で済ませることができます。
まとめ
8020運動は、「80歳で20本以上の歯を保つ」という目標のもと、多くの成果を上げてきました。そして現在、その先の目標として「KEEP28」という新しい考え方が広がり始めています。
KEEP28は、単に歯を残すだけでなく、「28本の歯を健康な状態で機能させ続けること」を目指す取り組みです。
これからの歯科医療は、治療中心から予防中心へ。
「治療する歯科」から「歯を守る歯科」への転換が求められています。
いつまでもご自身の歯でおいしく食事を楽しみ、健康な毎日を送るために、ぜひ定期検診を習慣にしましょう。今ある歯を大切に守ることが、将来の健康への大きな投資になります。
監修:永井歯科医院 院長 永井 太一