2025年10月03日

「口を開けるとカクッと音がする」「朝起きると顎がだるい」「口が開けにくい」――これらは、顎関節症の代表的なサインです。近年は、男女問わず多くの方に見られる症状で、特に20〜40代の女性に多いといわれています。放置してしまうと食事や会話に支障が出るだけでなく、肩こりや頭痛など全身の不調につながることもあるため、早めの対応が大切です。ここでは顎関節症について詳しく解説します。
顎関節症とは?
顎関節症とは、耳の前にある「顎関節」と、それを動かす「咀嚼筋(そしゃくきん)」に異常が生じ、痛みや違和感を引き起こす病気の総称です。歯ぎしりや食いしばりなどにより関節に負担がかかると、関節の動きがスムーズでなくなり、様々な症状が現れます。
主な症状
顎関節症の症状は人によって異なりますが、以下のようなものがよく見られます。
・顎の痛み:口を開けたり噛んだりすると痛む
・関節の音:カクカク、ジャリジャリといった音がする
・口が開けにくい:指2本ほどしか入らない、途中でひっかかる
・顎のだるさや疲れ:特に朝起きたときに感じやすい
・全身症状:頭痛、肩こり、首の張りなど
原因は一つではない
顎関節症は「これが原因」と一言で言える病気ではありません。多くの場合、いくつかの要因が重なり合って発症します。
・歯ぎしり・食いしばり:無意識に強い力が加わり、関節に負担
・噛み合わせの不良:歯の欠損や不正咬合によってバランスが崩れる
・ストレス:精神的緊張が筋肉のこわばりを引き起こす
・生活習慣:頬杖、うつ伏せ寝、片側ばかりで噛む癖
・外傷:顎への打撲や交通事故など
診断と検査
顎関節症の診断では、まずお口の状態を丁寧に確認します。
Ⅰ. 口の開閉量や動きのチェック
Ⅱ. 関節や筋肉の圧痛の確認
Ⅲ. 噛み合わせのバランスを診る
Ⅳ. 必要に応じて、レントゲンやCTで関節の状態を確認することもあります。
治療方法
顎関節症は多くの場合、**保存療法(手術を伴わない治療)**で改善します。代表的な方法をご紹介します。
スプリント療法
透明なマウスピースを夜間装着し、関節や筋肉の負担を減らします。歯ぎしりの強い方にも有効です。
薬物療法
痛みが強い場合には、消炎鎮痛薬を一時的に使用します。
理学療法
顎の筋肉をほぐすマッサージやストレッチ、温罨法(温める療法)などを行います。
生活習慣の改善
姿勢を正す、片側噛みをやめる、頬杖を避けるなど、日常生活の癖を見直します。
咬合治療
噛み合わせに大きな問題がある場合は、歯の形態修正や矯正治療を検討します。
自宅でできるセルフケア
軽度の顎関節症であれば、セルフケアで症状を和らげられることもあります。
・顎に無理な力をかけない(大きく口を開けすぎない)
・硬い食べ物を避ける
・顎や首を温めて血流を良くする
・リラックスする習慣をつけ、ストレスを軽減する
ただし、自己流で放置するのは危険です。症状が続く場合は必ず歯科医院に相談してください。
放置するとどうなる?
顎関節症は自然に軽快するケースもありますが、放置すると慢性化し、関節円板(顎のクッション)がずれて戻らなくなる「顎関節内障」や、関節の変形を伴う「変形性顎関節症」に進行することもあります。そうなると治療が難しくなるため、早期の受診が安心です。
まとめ
顎関節症は「噛む・話す」といった日常の基本動作に関わるため、生活の質を大きく左右します。
原因はさまざまですが、多くの場合は保存的な治療と生活習慣の見直しで改善が可能です。
もし「顎が痛い」「口が開きにくい」「音がする」といった症状に心当たりがあれば、早めに歯科医院へご相談ください。当院でも患者様一人ひとりに合わせた治療を行い、快適な日常生活をサポートしています。
監修:永井歯科医院 院長 永井 太一