2025年10月10日

毎日の歯みがき。ドラッグストアに行くと、形も種類もさまざまで「どれを選べばいいの?」と迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
何気なく選んで使っている歯ブラシですが、実はその“選び方”ひとつで、歯の健康状態が大きく変わります。
今回は、歯科医院の立場から、歯ブラシ選びのポイントと正しいケア方法を詳しくご紹介します。
歯ブラシ選びのポイント
電動歯ブラシ vs 手動歯ブラシ
最近は電動歯ブラシの普及が進み、「手磨きとどちらがいいの?」というご質問をよくいただきます。
電動歯ブラシの最大のメリットは、短時間で効率的に歯垢(プラーク)を除去できること。微細な振動や回転で、歯と歯ぐきの境目に入り込んだ汚れも落としやすく、一定の圧で磨けるため、力を入れすぎて歯ぐきを傷つける心配も減ります。手先の器用さに自信がない方、矯正中の方、高齢の方にもおすすめです。
一方、手動歯ブラシは自分の力加減や角度を細かくコントロールできるのが魅力。正しいブラッシング方法を身につければ、電動ブラシに劣らない清掃効果が得られます。どちらが「正しい」というわけではなく、生活スタイルや磨き方のクセに合っているかどうかが大切です。
迷ったら、歯科医院で一度磨き方をチェックしてもらうと、自分に合ったタイプがわかります。
ヘッドの大きさ:大きい vs 小さい
ヘッドの大きさも重要なポイントです。
大きめのヘッドは一度に広範囲を磨けるため、効率よく感じるかもしれませんが、奥歯の裏や歯並びの細かいすき間には届きにくい傾向があります。
一方、小さめのヘッドは小回りが利き、細部まで丁寧に磨けます。口が小さい方、奥歯までしっかり磨きたい方、矯正装置をつけている方には小さめが最適です。
基本的には「少し小さいかな」と感じるサイズを選ぶのがコツ。時間は少しかかりますが、磨き残しを減らすことができます。
毛のかたさ:かため vs ふつう vs やわらかめ
毛のかたさを間違えると、せっかくのブラッシングが逆効果になることもあります。
「かため」は汚れを落とす力が強い分、歯ぐきを傷つけてしまうリスクがあります。歯肉が下がってきている方や、知覚過敏がある方には不向きです。
「やわらかめ」は歯ぐきに優しく、炎症や出血がある方にも安心。ただし、やさしく長めに磨くことがポイントです。
多くの方には「ふつう」の硬さが適しています。力を入れすぎず、毛先を軽く歯面に当てるだけで十分な清掃効果が得られます。
毛先の形や植毛の種類にも注目
毛先が「フラット」なタイプは、歯面を均一に磨きやすく、誰でも扱いやすい形です。
「段差植毛」や「山型」のブラシは、歯の凹凸や歯間部に毛先が届きやすく、歯並びが複雑な方に向いています。
また、極細毛タイプは、歯と歯ぐきの境目の汚れをやさしく除去できるため、歯周病予防にも効果的です。
歯ブラシは1ヵ月に1本が目安
どんなに高品質な歯ブラシでも、毛先が開いた瞬間に清掃力は約40%低下します。
見た目がきれいでも、1か月を目安に新しいものへ交換しましょう。毛先が広がってきたら、それは「お疲れさま」のサインです。
歯ブラシだけでは落とせない汚れもある
実は、歯ブラシだけでは歯と歯の間の汚れの約6割しか落とせないといわれています。
虫歯や歯周病の原因となるプラークは、歯と歯のすき間にもびっしり。ここをきれいにするには、「歯間ブラシ」や「デンタルフロス」の併用が欠かせません。
歯間ブラシ・デンタルフロスのすすめ
歯間ブラシは、歯と歯ぐきの境目の汚れを物理的にかき出す道具です。サイズは0.6〜1.0mmなどさまざまあり、隙間に無理なく入るサイズを選ぶことが大切です。無理に大きいものを使うと歯ぐきを傷つけてしまうため、歯科医院でサイズを確認するのが安心です。
一方、デンタルフロスは糸状で、歯が密接している前歯部などの清掃に最適です。歯の側面についたプラークをこすり落とすように使います。最近は持ち手付きタイプも多く、初めての方でも扱いやすくなっています。
歯ブラシだけでは届かない部分をこれらの補助用具で補うことで、歯垢除去率が約2倍にアップすると報告されています。毎晩の歯みがきの仕上げとして取り入れるだけで、お口の中の清潔感が大きく変わります。
自分に合ったケアを歯科医院でチェック
「正しい歯ブラシを選んでいるつもりなのに、虫歯や歯ぐきの腫れが気になる」——
そんな方は、磨き方や道具の選び方がご自身に合っていない可能性があります。当院では、お口の形や歯並び、磨き残しの傾向をもとに、最適な歯ブラシや補助用具の組み合わせを提案しています。
毎日のブラッシングは、最も身近な予防医療です。
道具を正しく選び、正しい方法で使うことが、将来の歯の健康を守る第一歩。
あなたにぴったりの一本とケア方法を見つけて、より快適で健康な口もとを目指しましょう。
監修:永井歯科医院 院長 永井 太一