2025年9月01日

「インプラントは人工の歯だから、虫歯にも歯周病にもならない」。
そんな風に思っていませんか?
実は、インプラントも“歯周病”になります。その名も「インプラント周囲炎」。自分の歯を支える歯周組織と同じように、インプラントを支えている骨や歯ぐきも炎症を起こすことがあるのです。
今回は、インプラント治療を受けた方、またはこれから受けようと検討している方にぜひ知っていただきたい「インプラント周囲炎」について詳しく解説します。
インプラント周囲炎とは?
インプラント周囲炎とは、インプラントを支えている骨や歯ぐきに炎症が起きる病気です。進行すると、インプラントを支えている骨が溶けてしまい、最終的にはインプラントが抜け落ちてしまうこともあります。
天然歯の歯周病と違い、インプラントには「歯根膜(しこんまく)」というクッションの役割を果たす組織がありません。そのため、一度炎症が起きると進行が早いのが特徴です。
インプラント周囲炎の原因
主な原因は、「プラーク(歯垢)による細菌感染」です。インプラントも天然歯と同じように、歯ぐきの周囲に汚れが溜まると細菌が繁殖し、炎症を引き起こします。
具体的には以下のような要因が関係しています:
・セルフケア不足(歯磨きが不十分)
・定期メンテナンスの未受診
・喫煙習慣
・糖尿病などの全身疾患
・過剰な咬合力(強く噛みすぎる)
特に喫煙は、血流を悪くし、歯ぐきの免疫力を低下させるため、インプラント周囲炎のリスクを大きく高めます。
初期症状を見逃さないで
インプラント周囲炎の初期には、自覚症状がほとんどありません。痛みもないため、気づかないうちに進行してしまうケースが少なくありません。
以下のような症状が現れたら、すぐに歯科医院でチェックを受けましょう:
・インプラント周囲の歯ぐきが赤く腫れている
・出血しやすい
・膿が出る
・口臭が強くなる
・インプラントに違和感やぐらつきを感じる
早期発見・早期治療が、インプラントの寿命を延ばす鍵になります。
治療法と対処法
インプラント周囲炎の治療は、炎症の進行度によって異なります。軽度であれば、歯科医院でのクリーニングと正しいブラッシングで改善することが可能です。
しかし、中〜重度に進行すると、外科的処置が必要になることも。歯ぐきを切開して感染部位を清掃したり、骨の再生治療(再生療法)を行ったりする場合もあります。
治療と並行して、患者さん自身のセルフケアの見直しや、生活習慣の改善(禁煙、食生活の見直しなど)も非常に重要です。
予防が何よりも大切
インプラント周囲炎を防ぐために、もっとも効果的なのは日々の予防とメンテナンスです。
当院では、インプラント治療後も定期的なメンテナンスをおすすめしています。
メンテナンスでは、歯科衛生士が専用の器具でインプラント周囲の清掃を行い、磨き残しや歯ぐきの状態をチェックします。早期の変化にもすぐに対応できるため、安心です。
また、ご自身でできる予防策としては:
・歯科医師・歯科衛生士の指導に基づいた正しい歯磨き
・フロスや歯間ブラシの併用
・禁煙
・規則正しい生活習慣と食事
これらを日常的に行うことで、インプラントを長く健康な状態で保つことができます。
最後にーインプラントは“治療して終わり”ではありません
インプラントは、失った歯を補う優れた治療法ですが、“一生もつ”魔法の道具ではありません。
正しいケアと定期的な管理がなければ、天然歯と同じように病気になります。
当院では、インプラント治療後も患者様と長くお付き合いしながら、健康な口腔内を維持するお手伝いをさせていただきます。インプラントのことで不安や気になる症状がある方は、いつでもお気軽にご相談ください。
監修:永井歯科医院 院長 永井 太一