2025年7月01日

「せっかく治したのに、また同じ歯が欠けてしまった」「何度詰めても取れてしまう」――そんな経験をされたことはありませんか?
実は、こうしたトラブルには必ず“原因”が存在し、それにしっかりと向き合わなければ、治療を繰り返すだけの「いたちごっこ」になってしまう可能性があります。今回は、“なぜ同じ歯が繰り返し壊れるのか”というテーマで、根本的な原因にアプローチする治療の重要性についてお話しします。
表面的な修復だけでは治らない
歯が欠けた、詰め物が外れた、かぶせ物が取れた――こうした症状が現れたとき、多くの方は「とりあえず治してもらおう」と歯科医院を受診されます。もちろん応急処置としての修復治療は必要ですが、問題は“なぜそれが起きたのか”をしっかりと診断しているかどうかです。
たとえば、何度治しても外れる詰め物。その原因が歯ぎしりによる強い力だったとしたら、いくら上から詰め物を入れ直しても、再発する可能性は高くなります。原因に目を向けずに対処療法だけを繰り返していると、最終的には歯が破折してしまうケースもあるのです。
歯が壊れる原因はひとつではない
歯が繰り返し壊れる原因はさまざまですが、代表的なものには以下のようなものがあります:
1. 噛み合わせの不調和
噛み合わせのバランスが崩れていると、一部の歯に過度な負担がかかりやすくなります。その結果、詰め物が割れる、歯が欠ける、根が折れるなどのトラブルが起こります。
2. 歯ぎしり・食いしばり
無意識に行っている歯ぎしりや食いしばりは、非常に強い力で歯や補綴物を圧迫します。特に睡眠中は力のコントロールが効かないため、知らず知らずのうちに歯に大きなダメージを与えていることがあります。
3. 不十分な歯の土台
虫歯治療後に十分な土台(コア)が形成されていなかったり、内部の虫歯が取り切れていない場合、かぶせ物がうまく安定せず、トラブルの原因になります。
4. 歯周病
歯を支える骨や歯ぐきが弱っていると、歯自体が動揺し、噛み合わせの力に耐えられなくなって破損することがあります。
原因に向き合った治療のすすめ
こうした再発を防ぐためには、「なぜ壊れたのか?」という視点をもった診査・診断が欠かせません。当院では、以下のようなステップで原因に向き合った治療を行っています。
詳細な問診と検査
症状だけでなく、生活習慣、ストレス状況、食生活なども含めて、全体的な視点からお話を伺います。
噛み合わせのチェック
専用の機器や咬合紙を使って、どの歯にどれだけの力がかかっているかを確認します。
マウスピースのご提案
歯ぎしりや食いしばりがある方には、就寝中に装着するマウスピース(ナイトガード)をおすすめすることもあります。
長期的視点
被せ物や詰め物の設計も、“壊れにくさ”や“力の分散”を考慮して計画していきます。
「壊れた歯を治す」から「壊れない口をつくる」へ
繰り返し壊れる歯に悩んでいる方は、もしかすると歯だけではなく、お口全体のバランスが崩れているサインかもしれません。一時的な修復だけで終わらせず、根本的な原因に目を向けることで、再治療のサイクルから抜け出すことができます。
「壊れた歯を治す」のではなく、「壊れない口をつくる」――それが、私たちが目指す歯科医療のあり方です。お困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。
監修:永井歯科医院 院長 永井 太一