歯を失ってしまったときの治療法として、近年ますます注目を集めているのが「インプラント治療」です。天然の歯のような見た目と噛み心地を取り戻せることから、多くの患者さまに選ばれている治療法ですが、一方で「手術が必要と聞いて不安…」「失敗のリスクはないの？」といったお声も少なくありません。

確かに、インプラント治療にはいくつかのリスクや注意点があります。しかし、それを上回るメリットもたくさんあります。今回は、インプラント治療の「リスク」と「メリット」を正しく知り、安心して治療を検討していただけるように、分かりやすく解説していきます。

インプラント治療の主なリスクとは？

まずは、インプラント治療を受ける前に知っておくべきリスクについて見ていきましょう。

①外科手術を伴う

インプラント治療は、顎の骨に人工歯根（インプラント）を埋め込む外科的な手術が必要です。局所麻酔を行い、痛みは最小限に抑えられますが、術後に腫れや痛みが出ることがあります。また、全身疾患（糖尿病・心疾患など）がある方は、リスク管理が重要になります。

②骨の状態に左右される

インプラントは顎の骨に固定するため、骨の量や質が十分でないと、手術ができない場合があります。骨が足りない場合には「骨造成（こつぞうせい）」という前準備が必要になることもあります。

③インプラント周囲炎のリスク

天然歯に歯周病があるように、インプラントにも「インプラント周囲炎」という歯周病のような炎症が起こる可能性があります。これは、インプラントの周囲に細菌が繁殖し、骨が溶けてしまう状態です。適切なメンテナンスと日々のケアが非常に大切です。

④治療期間が長め

インプラントが骨としっかり結合するには、数ヶ月の治癒期間が必要です。そのため、全体の治療期間は一般的に3〜6ヶ月程度と、入れ歯やブリッジと比べて長くなる傾向があります。

それでも選ばれる！インプラントの大きなメリット

では、これらのリスクを踏まえてもなお、多くの方にインプラントが選ばれている理由とは何でしょうか？インプラントならではのメリットを見ていきましょう。

①天然歯のような噛み心地

インプラントは顎の骨としっかり結合するため、しっかりとものが噛めます。硬いものを食べるときの違和感も少なく、まるで自分の歯のように自然な感覚で食事が楽しめます。

②見た目が自然で美しい

セラミックなどで作られた人工歯は、見た目も非常に自然です。特に前歯など、人から見える部分の歯を失ってしまった方にとっては、大きな安心材料になります。

③周囲の歯に負担をかけない

ブリッジ治療では、失った歯の両隣の健康な歯を削って支台にする必要がありますが、インプラントは単独で固定するため、他の歯を犠牲にすることがありません。結果的に、お口全体の健康を長く保つことができます。

④骨の吸収を防ぐ

歯を失うと、その部分の顎の骨は次第に痩せてしまいます。インプラントは骨に直接力がかかるため、顎の骨が刺激され、骨の吸収（やせ）を防ぐ効果があります。

インプラント治療が向いている人・向いていない人

インプラントは非常に優れた治療法ですが、すべての方に適しているわけではありません。

向いている方

・健康な方で全身疾患がない
・毎日のセルフケアを丁寧に行える方
・長期的に口腔内の健康を維持したい方

慎重な検討が必要な方

・骨量が少ない、または骨の質が弱い方
・重度の糖尿病や心疾患がある方
・喫煙の習慣がある方（治癒の妨げになる可能性あり）

とはいえ、最近では骨造成や喫煙サポートなどの選択肢も広がっており、多くの方が治療可能になっています。まずはしっかりと診査・診断を受けて、ご自身に合った治療法を一緒に考えていくことが大切です。

まとめ：インプラントは「未来への投資」

インプラント治療には確かにリスクもあります。しかし、正しい知識と適切な管理を行えば、そのリスクは十分にコントロール可能です。そして、それ以上に「よく噛める」「見た目が自然」「周囲の歯を守れる」といったメリットは、毎日の暮らしの質を大きく向上させてくれます。

歯を失ってしまったことでお悩みの方、これからの人生をより快適に過ごしたい方にとって、インプラントは非常に価値のある選択肢です。気になる方は、ぜひ一度、当院までお気軽にご相談ください。あなたにとって最適な治療法を、しっかりとご提案いたします。

監修：永井歯科医院　院長　永井 太一