2025年7月22日

虫歯や歯周病、事故などで歯を失ってしまったとき、「1本くらいなら大丈夫」と、そのまま放置してしまう方が少なくありません。しかし、歯を失ったままにしておくことには、見た目以上に大きなリスクが潜んでいます。今回は、歯を失ったままにすることで起こる問題と、その解決策としてのインプラント治療について解説します。
歯が1本なくなるだけで起きる変化
口の中は、非常にバランスの取れた構造をしています。歯はただ物を噛むために並んでいるわけではなく、隣の歯や噛み合う歯と連携しながら機能しています。1本でも歯を失うと、このバランスが崩れ、さまざまな問題が連鎖的に発生してしまうのです。
例えば、抜けた歯の両隣が傾いてきたり、対合歯(噛み合っていた反対側の歯)が伸びてきたりして、噛み合わせ全体が乱れてしまいます。また、噛む力のバランスが崩れることで、残っている歯に過剰な負担がかかり、次々に他の歯も悪くなってしまうこともあります。
噛む力の低下と全身への影響
歯を失ったままでいると、当然噛む力は弱くなります。食べにくいからと、柔らかい物ばかり食べるようになれば、栄養の偏りや消化不良を引き起こす可能性もあります。
さらに近年の研究では、噛む力の低下が認知症のリスクを高めることや、生活習慣病の悪化に関係していることも指摘されています。つまり、歯を失ったままにすることは、単なる“口の問題”ではなく、全身の健康にも直結する深刻な問題なのです。
入れ歯やブリッジの限界
歯を失った場合の治療として、従来は入れ歯やブリッジが主流でした。これらの方法は比較的早く治療が終わるというメリットはありますが、隣の健康な歯を削らなければならなかったり、異物感が強かったりといったデメリットもあります。
特に部分入れ歯は、金具のかかる歯に大きな負担がかかり、長期的に見るとその歯を失ってしまうリスクもあるのです。
インプラントがもたらす新しい選択肢
こうした従来の治療法のデメリットを補う方法として、現在注目されているのが「インプラント治療」です。インプラントは、失った歯の根の部分に人工のチタン製スクリューを埋め込み、その上に人工歯を装着する治療法です。
最大の特徴は、「周囲の歯に負担をかけないこと」と「自分の歯のような噛み心地が得られること」です。しっかりと骨に固定されるため、ずれたり外れたりする心配もほとんどありません。また、咀嚼能力も天然歯に非常に近いため、これまで通りに食事を楽しむことができます。
インプラントは”早め”がカギ
インプラント治療を検討する際に重要なのは、「なるべく早い段階で始める」ことです。歯を失ってから時間が経つと、歯槽骨(歯を支えていた骨)が徐々に痩せてしまい、インプラントを埋め込むのが難しくなるケースもあります。
また、噛み合わせの悪化や顎関節への負担、発音への影響なども早期治療によって予防できます。失った歯の放置期間が短ければ短いほど、治療はスムーズに進み、仕上がりもより自然なものになります。
まとめ:失った歯を放置しないで
「たった1本の歯だから」「忙しいからそのうちに…」と後回しにしているうちに、口の中はどんどん悪化していきます。健康な歯を守るためにも、そして快適な日常生活を維持するためにも、失った歯はそのままにせず、できるだけ早く適切な治療を受けることが大切です。
インプラントは、見た目・機能ともに優れた現代の治療法です。ご自身の今後の健康のためにも、「なぜ今インプラントなのか」を一度真剣に考えてみませんか?
当院では、患者さま一人ひとりに合わせたインプラント治療をご提案しております。ご不安なこと、ご質問などございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
監修:永井歯科医院 院長 永井 太一